アップサイクルおひなさま

アップサイクルおひなさま

桃の節句🎎

的なことは、今年は何もしなかった

唯一、祖母お手製の、ポータブルおひなさまを前日の3月2日に出してきた

このポータブルおひなさまは、ちょっとすごい

どこがすごいかというと、ほぼすべての材料が何かの再利用品でてきている

使い終わったお弁当の容器や、

食べた後の蛤の殻や、ケーキの飾り

着なくなった着物や洋服の生地や、

あまり物のハギレのレザー

アップサイクルなんて言葉がなかった頃、祖母は創意工夫と並外れた裁縫の技術を駆使し、こんなに素敵なおひなさまをつくってくれた

男雛、女雛(おびな、めびな)

三人官女(さんにんかんじょ)

五人囃子(ごにんばやし)に

三人上戸(さんにんじょうご)

右大臣に左大臣(うだいじんにさだいじん)

梅の花とぼんぼり

フルセットの7段飾りに負けない、豪華メンバーのおひなさま

だから、月日が経つにつれ、男雛の顔にシミが出てきてもそれもなんだか愛おしい

桃の形の弁当箱の蓋開けるときは、むかしの祖母のことを想像しながら、わたしもいっしょに岡山を旅している

ぼんぼりがわりの芯が焦げた蝋燭を見れば、いつかのひなまつりに家族みんなで食べたごちそうやケーキのことが浮かんでくる

ピンクと赤のレザーで包まれた貝は鈴になっていて、テレビを見ながらすごいスピードで手袋の内職をこなしていた祖母の姿を思い出す

このおひなさまの中には、

祖母の人生と孫のわたしや娘である母への愛情がぎゅうぎゅうに詰まっている

だから毎年、このおひなさまさえあればそれだけでわたしは満足してしまう

いつまで見ていても、見飽きないわたしの宝物

今年はもう少し眺めていたくなったから

旧暦のひなまつりが終わる月末まで出しておこう

無事に嫁にも行けたことだから急いで仕舞うこともないだろう

3月3日のひなまつり

ポータブルおひなさまにつられて

小さな頃のひなまつりのことを鮮明に思い出した

その日はいつも母が手作りしてくれたご馳走がテーブルの上に並んでいた

おひなさまの形のお稲荷さんのお寿司

蛤のお吸い物

ひなあられ(越後製菓の)に

楽しみだったひなまつりケーキ

その一月前には、祖父母が買ってくれた7段飾りの雛人形を、赤い毛氈の上に飾りつけた

まずは人形を飾る段を組み立てて

次に箱から人形や道具を取り出して

その後は速やかに空の箱を片付けて

これは結構な重労働だったろうな

小さい頃は触らせてもらえなかったけど、少し大きくなると手伝いを許された

わたしはいつも、箱の中から人形を取り出して、顔を覆う薄い紙を取るたびにドキドキしていた

お人形さんが泣いてるかもしれないって、誰かが言ったから

泣いてるかもしれない

泣いていたらどうしよう

ドキドキしながら顔を確認すると、

みんないつもの通り白くてすべすべなお肌で、気の遠くなるような極細の線で描かれた綺麗な目で、去年と同じように微笑んでいた

その顔を見て、ひとりほっとするのだった

最後に飾ったのは、いつだったのかももう、覚えていないけど

みんな、笑顔でいてくれるだろうか

当時の母は今のわたしより若くて、大変だったろうに、すごく一生懸命にいろんなことをやってくれていた

そんなだいじなことをすっかり忘れて生きてきた

小さな頃の記憶の中には、いつも母と祖母の姿がある

それはどれも特別で、幸せな記憶

わたしは愛されていたこと、それしか伝わってこない

母は70代になり、祖母はあと数年で100才になる

元気で肌がツヤツヤなかわいいふたりのために

来年は、実家のおひなさまを久しぶりに飾ってみたくなった

もちろん、じぶんのためにも

みんなの笑顔に会いたくなった🌸🎎

書いた人

えみこらぱん
好きなことは本を読むこと、美味しいものを食べること。
パートナーの育てるメロンが大好物。
白うさぎの聖地へやってきて3年目、瀬戸内出身の白うさぎ。
春生まれなので、寒いのは大の苦手。
夢は自分の本が本屋さんに並ぶこと。
自然いっぱいの中でのんびり暮らしています。